top of page

一日の終着点で見上げる空|翔平

自宅玄関の少し前で立ち止まり、

首の据わっていない赤ちゃんのように

こてんと上を向く。


空だけを見て、息を吸って吐く。


今日も生きてるなぁって思う。


幼い頃から家に帰ってくるとよく空を見上げていた。理由はどこよりも星が綺麗に見えたから。田園風景が広がる町で街灯も家の周りには無くて、星を見るには絶好の場所にある。


成長してからも家に帰ってくると何となく空を見上げていた。友達と遊んで帰ってきた夕方、部活帰りの夜空、試合に負けて帰ってきた青空、仕事から帰ってきた雨空、

嬉しいこと、楽しいこと、辛いこと、悔しいこと、どんなことでも肯定してくれて、私のことを見守っていてくれた気がする存在だった。


玄関の前で見上げる空は特別。

一日の終着点で

一日が終わりそうな空を見上げる。

今朝、家を出てから起きたことが走馬灯のように脳内を駆け巡るときもあれば、

あれ?今日は何してたっけって思うときもある。

一人の時間の中で、息を吸って吐いて、頭の中に少し冷ややかな空気を入れる。


何かあっても、何もなくても今日一日生きてた。


そして、今日も家に帰ってきた。


頑張った。


今日も私は生きていた。



テーマ『生きてるって感じること』

2022/12/17発行「ちがう生き方」第3号掲載

閲覧数:1回0件のコメント

最新記事

すべて表示

イングリッシュマフィン(具なし)|波多江幸広

昼ごはんに何か食べようと思ったけど、 パンしかない。 冷蔵庫には何もない。調味料しかない。 具と言えるようなものが。 「「何もない!」」 そのパンは、白い粉のふいたイングリッシュマフィンで、具を挟んでよと、切れ込みがむなしく入っていた。 仕方がないから。パンだけをかじる。...

夜は光とおしゃべりをする|にちようだな

ここ数年、外にいる時は夜が多くなりました。歩いていても自転車や電車に揺られていても、暗くなってからの空気のほうが気楽です。すっかりなじんでしまったので、仕事の都合も夜に合わせるようになりました。 夜は怖い時もあるけれど、意外なタイミングで人を親密にします。昼だったら人の波に...

声で始まる日常|hamapito

私の日常は「声」から始まる。 目を覚ました瞬間に漏れる声。まだ寝ていたいと頭で呟く声。「んー」と隣から聞こえる声。自分の声も誰かの声も朝は柔らかく響く。だからだろうか、アラーム音よりも声で起こされた方が起きられるのは。 実家で暮らしていた頃、私を起こすのは母だった。目覚まし...

Comments


bottom of page