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本の複業と母親業|はまだみさと

私は利尻島という北海道の中でも北の果てにある離島で暮らしている。島暮らしをし始めたのは、地域おこし協力隊という制度で仕事を求めて移住してきたことがきっかけだ。読書推進員として着任し、まちの図書室で働いていた。そのうち、今のパートナーである人と出会ったことで結婚と出産を経て定住に至る。

地域おこし協力隊を退任後は、この地で淡濱社という本の複業を営む個人事業主として仕事をしている。その一方で、一児の母として日々邁進している。

仕事と育児。この二つが私のライフワーク。朝9時半頃から保育所のお迎え時間である16時近くまで仕事。それ以外の時間は基本的には育児と家事が占める。保育所が休みの日は仕事をほとんどできないから平日が勝負だ。

正直、仕事はまだまだやりたい気持ちがある。けれど、家族との時間も大切にしたい。それでもやっぱりやりたいことがまだまだ……そんな思いでいつも揺れている。

本の複業と母親業。この二足の草鞋(?)を行ったり来たりしていると「生きてるなぁ」と感じる。独身の時やパートナーと2人だった時に比べて、そう感じることが多くなった。

おそらく、自分が働きかけないと何も進まないという部分が共通している。しかも育児に関しては私自身の都合だけでなく、子どもにかなり振り回される。

常にいろんな小さな選択と決断が迫られる。いろんな責任が自分にかかっている。負担に感じることもなくはないけれど、そんな日々は自分らしい人生だと思う。

仕事のストレスは育児で癒やされるし、育児のイライラは仕事で解消する。二足の草鞋だからこそ、アイデンティティを行き来できる。そうすることで、気持ちを切り替えたり、時間や業務をうまく割り振ったり、物事を割り切ったりがしやすい。

人によって、時と場合によって、自分らしい人生というのは違う。今の私にとっては、本の複業と母親業を行ったり来たりすることこそが、生きてると感じられることなのだろう。


テーマ『生きてるって感じること』

2022/12/17発行「ちがう生き方」第3号掲載

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