お題を見たとき、そもそも自分を大切にしている状態には二種類あると感じました。一つは「自分だけ」が大切な状態、もう一つは「自分も他人も」大切な状態です。自分だけが大切な状態とは、例えば「自分以外の物事に興味がない」「疑心暗鬼になりやすい」など。対して、自分も他人も大切な状態とは、例えば「あらゆる物事に感謝できる」「自分の非を素直に認められる」など。わたしの場合、他人も大切にしたいと思えるようになったのはつい最近のことです。不思議なことに、他人も大切にしようと行動するうちに、自分のことだけ考えていた頃よりもずっと笑顔で、穏やかに過ごせるようになりました。
今年2月、実家に帰りました。帰ってからは母が毎日ご飯を作ってくれています。直前まで一人暮らしだったので、人が作ってくれるご飯が本当に嬉しくて。ある日、母に「いつも美味しいご飯をありがとう」とお礼をしたら、「美味しそうに食べてくれるから、作り甲斐があるのよ」と笑ってくれました。その笑顔を見て、思わず泣いてしまいました。「昔はご飯を作ってくれるのが当たり前だと思ってた。ごめんね」「それでもそんな風に思ってくれて、ありがとう」と、心から思えたからです。
自分だけが大切な状態とは、実は「自分を守るだけで精一杯な環境にいる」とも言い換えられます。いじめなどの被害に遭っていたり、機能不全家族の影響下にあるなどのケースです。また、本人は周りを大切にしているつもりなのに「あの人は自分勝手だ」と誤解され、悩む人もいます。先天的な特性を持つ人に多いようです。わたしの場合は環境と特性、両方の理由が重なり、気づけば自分のことばかりでした。苦しかったです。でもだからこそ、「自分だけ」の状態から抜け出せない、あるいは誤解されて辛いといった、ある種の「生きづらさ」を抱える人の力になれると思っています。わたしは今、それを叶えるために福祉系の専門学校に通っています。結局、誰かのために何かしているときが一番楽しいんですね。
心理学において、自分だけが大切な状態から起こる言動を「非主張的自己表現」または「攻撃的自己表現」、自分も他人も大切にする言動を「アサーション」と呼ぶそうです。アサーションはもともと心理療法の一環ですが、最近は自己表現のあり方として広く注目されているそうで、これからもっと勉強しようと思っています。自分のためにも、他人のためにも。
テーマ『自分を大切にする方法』
2022/5/1発行「ちがう生き方」第1号掲載
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